丸山健二最新書き下ろしエッセイ『つれあい』(上下巻)公開しました!
みなさん、お疲れ様です。
早速ですが、主宰が奥様と半生を振り返ったエッセイ『つれあい』(上下)を書きました。
noteで公開しています。以下からぜひご一読いただければ幸いです。
本当は本にしたかったのです。
奥様の写真も数十点いただきました。
主宰がレンズを通して見つめる奥様の表情が素敵で、お二人の関係が永遠のように見えます。
しかし、noteでの公開を決めたとき、写真の掲載は諦めました。
管理人の力不足です。すみません。
でもいつか、本にしたいと思っています。
(管理人)
追記:本文から2つ抜粋させいただきます。
できることなら私を拒絶してもらいたかったのです
少なくともこんな危険人物には眉を曇らせる瞬間を見せてほしかったのです
そうすれば私は身の程を知ってそれ以上の接近は考えなかったでしょう
そして心置きなく無難ではない道へと突き進んでいたことでしょう
あげくの果てに当然の報いとしての破局を迎えて早死にしていたことでしょう
運命のやり口は皮肉にあふれています
彼女は私の正体に気づいていながらまるごと受け容れたのです
要するに
ならず者や無法者に強く魅せられた外れ者を拒まなかったのです
こんな救いがたい男をほとんど躊躇なしに歓迎してくれたのです
(上巻より)
やがて寿命が尽きるという常識中の常識も
まだ実感される機会がほとんどなく
社会から著しく逸脱した暮らしを送る
はみ出し者としての私たち夫妻は
ありふれた疎外感に苛まれることなく
浮き世を生きている実感を楽しんでいました
明日の人生の展開へ思いを馳せることもなく
世界が向かう先にいかなる悲劇が待ち構えていようと知ったことではなく
自由には付き物の不安定な暮らしを存分に堪能していたのです
それは敷石の拡大と共に揺るぎないものと化し
……とそのような錯覚を強めながら
一介の人間として授けられている過酷な条件をまったく意に介さず
「バカ夫婦」としての在り方に満足し切っていたのでしょう
私たちにとって人生は冗談そのものでした
ありとあらゆるしがらみにがんじがらめにされている世間の人々の右往左往が
果たして必要なのかどうかさえも理解できなくなっていました
そして私はそれをよしとしていたのです
(下巻より)
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