2024.03.30 22:38言の葉便り 花便り 北アルプス山麓から(十四) 今は亡き、かの高倉健さんが訪ねてくれたことがあります。 みずから運転してきた愛車は見るからに高価そうで、私の家が数軒購入できるのではと想像され、その深々と心地よいエンジン音にも圧倒されたものです。 なお且つ、高名に過ぎる映画俳優が放って止まないオーラには、なるほど、聞きしに勝る...
2024.03.25 00:38言の葉便り 花便り 北アルプス山麓から(十三) 勤めていた会社が倒産の危機を迎えて転職を余儀なくされ、しかし、資本家に尻を蹴飛ばされつづける奴隷の立場はもうたくさんとばかりに、なんと、柄にもない、想像したことすらない、小説家の道を、興味も経験もなしに、とち狂ったとしか思えないほどの発作的なひらめきに沿って動いてしまったのです...
2024.03.21 23:55言の葉便り 花便り 北アルプス山麓から(十二) 冬期の渡り鳥であるレンジャクが群れをなして飛んできた際に、美しい姿のかれらが粘着性の強い糞といっしょに種を落としたに違いありません。 そして時が経ち、ヤドリギがイタヤカエデの枝のそこかしこから芽を出しのです。気づいたときにはもうほぼ占領されていることが、晩秋に葉が落ちて樹形が丸...
2024.03.14 18:52言の葉便り 花便り 北アルプス山麓から (十一) かつては紅葉よりも黄葉に惹かれたものです。その理由については我ながらよくわかっていません。想像するに、たぶん、明るい未来を表象するかのような見事な黄色に目を射られると、いかにも文学的な厭世気分がいっぺんに吹き飛ばされたかのごとき、そんな錯覚に陥るからでしょう。 黄葉する樹木で一...
2024.03.07 00:51言の葉便り 花便り 北アルプス山麓から(十)「花の命は短い」とは、言い古された真理のひとつで、女性の美とも重ね合わせた代表的な表現でしょう。 ところが、異性との付き合いはともかく、植物とのそれだけは長い私にとってみれば、説得力にあふれた言葉であるかどうかは甚だ疑問なのです。 それというのも、どれほど美しかろうと花期が長いと...
2024.03.01 01:09言の葉便り 花便り 北アルプス山麓から(九) 人生の荒波を想い起こさせずにはおかぬ、大小の厄介な問題をその場しのぎのやり口でどうにか乗り越え、今年の庭もまたいかにもそれらしく見えてしまう絶頂期を迎えつつあります。年々体力が落ちてゆく高齢者らしからぬ奮闘の成果としては、まあ、まあ、こんなものでしょう。そう自分に言い聞かせなが...