つぶやく管理人(3)新刊『ブラック・ハイビスカス』の行方②

 さて、3種の革を携えて東京・小川町にある藤原印刷東京支店を訪ねました。ご対応いただいたのは営業部の藤原さんです。

 藤原さんは、青山でひとり出版社をやっているビーナイスの杉田さんからご紹介いただいたのですが、いぬわし書房のような立場であっても頓着せずに相談に乗ってくださる気さくな方です。しかも熱い!

「あのぉ、丸山健二の新刊本を超豪華本で出版しようと思っているのですが……」と恐る恐る切り出す管理人に、「いいじゃないですか! 誰もが手に入る本とは別に、作家さんの個性に合わせて出版していきましょうよ!」という言葉をくれます。管理人よりずいぶん年下ですが、くじけそうになる心も彼の言葉に励まされるのです。ありがたい。

 本を安く作ろうと思えば、今はインターネットを介した印刷で印刷・製本を安く抑えることができます。これを否定するわけではありません。管理人も別の仕事では利用していますし、出版社ではなく、印刷・製本の知識のない人でも気軽に簡単に注文でき、しかも安く作れる仕組みは、上から目線で恐縮ですが、硬直した出版業界の枠組みを変える一手だと思います。

 管理人が藤原印刷さんにこだわる理由は、これまで出版社からの受け身の立ち位置を変え、企画の上流から参画し、著作者やデザイナーの個性を全面に押し出す本作りやプロモーションを展開されているからです。

 丸山健二の新刊『ブラック・ハイビスカス』は全4巻組で、それぞれ600ページを超える作品になっています。このようなボリュームになった理由の一つは、ここ数年の新刊を読んだ方ならばご存知でしょうが、丸山健二がこだわる本文レイアウトにあります。これについては別途機会を設けて記したいと思いますが、内容の重厚感もさることながら、この圧倒的なボリュームに負けない造本とデザインが必要ではないか、と管理人は思うのです。また、それが読者に本物の満足感を得ていただく重要な要素でもあると思うのです。

 作家の個性に合わせ、他の出版社ではできないこと。それをやるのがいぬわし書房です。だから藤原印刷さんにこだわりました。

 ということで、持っていった3種の革を見ていただきました。そして藤原さんが「これ、いいですね!」とおっしゃったのは、丸山健二と管理人が第一候補に選んだ革でした。今、実際に製本可能かどうか、工場で調べていただいており、結果待ちです。

 少し長く(熱く)なりましたが、最後まで読んでいただきありがとうございました。また進捗を報告します!

管理人

いぬわし書房

作家・丸山健二が主宰する出版社。丸山健二作品や真文学作品の出版、および丸山健二の活動状況をお知らせします。

5コメント

  • 1000 / 1000

  • 智久

    2020.04.03 07:10

    @洋様 アイデアのご提案ありがとうございます! ページ数を抑えて、巻数を増やすアイデアは考えてはいましたが、以下の理由から見送っていました。(1)原稿がそもそも4巻組で書かれていること。(2)巻数を増やせば、最終巻へ向かうにつれて実売部数が減っていくこと。(3)その減り方が予測できず、多くの在庫を抱えてしまうことへの不安。などです。でも、もう一度検討してみます。読者のみなさんからのお知恵はありがたいです! 今後ともよろしくお願い致します! 管理人
  • 2020.04.02 09:06

    管理人様 1冊300ページで全8巻にして1冊あたりの単価を下げるアイデアはどうでしょうか? その方が売れると思うし、読者としてもありがたいのですが。
  • 智久

    2020.03.18 12:34

    岡田様 先程の続きになります。 安価にして多くの人に読んでもらいたいのは岡田様と同じ気持ちでいます。しかし安くしたところで、興味を持って購入していただける読者は正直なところ1,000人もいないのが現状だと考えています。それを増やすのが管理人の役割ですので力至らず、岡田様はじめファンの方々と丸山健二には申し訳ない思いです。 先にお送りしたようなことから、いぬわし書房では一般書店に流通させずに受注発注制にできないかと試行錯誤しています。それも部数は絞りに絞った形です。といいますのも、書店における本の取扱は委託販売が通常で、返品が可能な扱いとなっています。注文が入りましても売れなければ返品されてくる仕組みです。いぬわし書房でそのような仕組みをやっていてはとても対応できません。 今回の新刊だけに終わらず、継続的に出版していくために、最初は高価かもしれませんが、次回の出版のために売上をストックして定価を下げていきたいと考えています。 とはいえ、なんとか価格を下げるように印刷所と相談しています。 岡田様のご意見は多くの方のご要望のような気もします。少しでも安価になり、そして丸山作品をはじめとした文学作品が継続して出版できるように努力してまいりますので、勝手なお願いですが見守っていてください。 今後とも何卒よろしくお願い申し上げます。 管理人